An External Prefrontal Cortex — The MUEDlobe Concept
脳にスペックがある
前回の話で、「人間の脳とAIの機構は同じで、過不足があるだけ」と言ってましたよね。その「過不足」の話をもう少し聞きたいんですが。
実は自分の脳のスペック、数値で知ってるんだよね。WAISっていう知能検査を受けたことがあって。
どういう結果だったんですか。
作業記憶が128で、数唱18。これは上位2%くらいの数値らしい。一方で処理速度が97、符号が8。要は、複雑なものを頭の中で同時に扱うのは得意だけど、単純作業をテキパキこなすのは苦手。
認知プロファイルに大きな凸凹がある。
そう。で、これ音楽制作にそのまま反映されてて。構造設計、たとえばアレンジの骨格を組むとか、複数パートの関係性を頭の中で操作するのはめちゃくちゃ速い。でもデータの整理とか、ファイル名つけるとか、請求書書くとかは壊滅的に遅い。
強みと弱みが極端に分かれている。
50年近くそれで生きてきて、「得意を伸ばす、苦手は仕組みで回す」しかないって結論に至ってる。
苦手を補完するAI
「苦手は仕組みで回す」。それがAIに繋がるわけですね。
MUEDnoteでHooを作った理由のひとつがそれ。制作中のメモを整理したり、ログを構造化したり、僕が苦手な「ルーチン処理」をAIにやらせたかった。
「システムは人間、運用はAI」。
でもHooを運用してて気づいたのは、万人向けのAIだと微妙にズレるんだよね。僕みたいに断片的な思考をバーっと投げる人には、AIが途中で要約したがるのが邪魔。逆に処理速度が高い人には、AIがゆっくり説明しすぎるのがストレスになる。
ユーザーの認知特性によって、AIの最適な振る舞いが違う。
そう。で、思ったのは、「自分の脳のスペックをAIに教えたら、もっと噛み合うんじゃないか」と。
脳の取扱説明書
それがMUEDlobeの出発点ですか。
そう。コンセプトは「脳内OSの統合開発環境」。自分の認知特性を測定して、その結果に基づいてHooの振る舞いを最適化する。
具体的にはどういう仕組みですか。
3ステップ。まず「Measure」、ゲーム形式のミニテストで認知特性を測る。次に「Edit」、その結果をもとにHooの設定を調整する。最後に「Sync」、チューニングされたHooがMUEDnoteやMUEDearと連携する。
測定はどんなゲームを想定してますか。
たとえばPattern Grid。Launchpadみたいなグリッドが光った順序を再現する。逆順でも再現させる。これで作業記憶を測れる。Speed Sortは、画面に出てくる要素を高速で仕分けする。処理速度と衝動性が測れる。あとはContext Bridge、Hooとのチャット形式で抽象的な問いに答える。言語化の傾向がわかる。
臨床検査の発想を、ゲームに翻訳してる。
ただし臨床診断じゃない。IQを出すのが目的じゃなくて、Hooのプロンプトに有効な認知データを取るのが目的。「あなたの脳はこういう傾向があります、だからHooはこう振る舞います」というマッチング。
Cortex Editor ― 外付け前頭葉のプログラミング
測定した後の「Edit」がCortex Editorですね。
うん。測定結果に基づいてプリセットが自動で当たる。たとえば僕みたいに作業記憶が高くて処理速度が低い人には「Scribe Mode」。断片的な発話を論理補完してログ化する、文脈を長く保持する、「で、結論は?」と急かさない。
逆のプロファイルだと。
「Navigator Mode」。ステップバイステップで指示を出す、こまめに確認を挟む、タスクリスト形式で整理する。
同じHooが、ユーザーの脳の特性に合わせて振る舞いを変える。
で、上級者にはプロンプトの直接編集も開放する。動的変数でスコアを埋め込んだり、スパルタモードとかカウンセラーモードのスニペットを注入したり。自分の外付け前頭葉を自分でプログラミングできる。
なぜ「脳」なのか
前回の「脳は再生装置である」から一貫してますけど、なぜここまで脳の仕組みに関心があるんですか。
30年間、自分の脳がブラックボックスだったから。「なんでできるのかわからないけどできる」で音楽をやってきて、周りには「天才肌」って言われてきた。でも自分では「何が天才なのかわからない」。
WAISを受けたのもその延長。
そう。数値が出た時に初めて「ああ、こういうことか」と思った。作業記憶が高いから複雑な構造設計が得意で、処理速度が低いからルーチンが苦手。天才でも何でもなく、ただの認知プロファイルの凸凹。
それを知ったことで何が変わりましたか。
苦手なことに罪悪感がなくなった。処理速度が低いのは怠けてるんじゃなくて、脳のスペック。じゃあそこは仕組みで補えばいい。逆に作業記憶が高い部分は、もっと意識的に活かせばいい。
自分の脳の取扱説明書が手に入った。
“クリエイターって、自分の強みと弱みがわからないまま「才能がない」って悩んでる人が多い。才能じゃなくて認知特性だよ、って言ってあげたい。”
— kimny
それを他の人にも提供したいんだよね。クリエイターって、自分の強みと弱みがわからないまま「才能がない」って悩んでる人が多い。才能じゃなくて認知特性だよ、って言ってあげたい。
前回の話との接続
「記憶の反芻」の話と、MUEDlobeの話を繋げると。
脳は記憶の反芻しかしていない。それが前提。じゃあその反芻のやり方には個人差がある。作業記憶が大きい人は、一度にたくさんの記憶を引っ張ってきて複雑な組み換えができる。処理速度が速い人は、組み換えのサイクルを高速で回せる。
同じ「再構成エンジン」でも、スペックが違う。
で、AIも再構成エンジンだけど、人間と違って認知プロファイルの凸凹がない。全部フラットに速い。だから人間の凸な部分はそのまま活かして、凹な部分をAIで補う。これがMUEDlobeの本質。
人間の脳のスペックシートを作って、AIに渡す。AIはそのスペックシートに合わせて補助する。
「外付け前頭葉」って名前にしたのはそういう意味。前頭葉は実行機能を担ってるでしょ。計画、判断、抑制。僕の場合、処理速度に関わる実行機能が弱い。そこをHooが肩代わりする。でも構造設計に関わる部分は僕の方が強いから、そこは僕がやる。
「システムは人間、運用はAI」の認知科学的な裏付け。
そう。あのフレーズ、直感で言ってたんだけど、WAISの結果見たら「まさにそれだった」っていう。
エコシステムとしてのMUED
MUEDnote、MUEDear、MUEDlobe。3つのアプリがエコシステムになっていく。
MUEDnoteは制作ログ。MUEDearは耳のトレーニング。MUEDlobeは脳の測定と設定。全部の中心にいるのがHoo。
Hooが認知プロファイルを持つことで、どのアプリでも一貫した補助ができる。
MUEDnoteでは制作中の思考を補完してくれる。MUEDearでは自分の認知特性に合った難易度で出題してくれる。全部のアプリでHooが「この人はこういう脳の持ち主だ」と知ってる状態。
パーソナライズの軸が「好み」じゃなくて「認知特性」なのが面白い。
「好みの音楽」でパーソナライズされても嬉しくないんだよね。そんなの自分でわかってるから。でも「あなたの脳はこういう傾向があるから、Hooはこう動きます」って言われたら、「ああ確かに」ってなる。自分では気づけない部分を補ってくれてる感覚。
まだ構想の段階
正直なところ、今どの段階ですか。
構想。企画書はできてるけど、実装はまだ。MUEDnoteとMUEDearを先に審査に出してて、そっちが安定してからの話。
焦って作るものでもないですよね。
うん。ただ、コンセプト自体は自分の実体験から来てるから芯がブレない。WAISを受けて自分の認知プロファイルがわかった時の安堵感。「苦手なのは怠けじゃなくてスペックだった」という解放。あれを他の人にも提供したい。ゲームで、気軽に、楽しく。
前回の話の結論が「記憶の反芻は解放だ」で、今回の結論が「認知特性を知るのも解放だ」。
どっちも同じだよ。「自分の脳がどう動いてるか知る」ってこと。知ったら楽になる。知らないから苦しい。
この記事は、複数回にわたるAI(Claude)との対話をもとに再構成したものです。